“コンビニエンス”な医療

見直される

うつ病治療では薬物療法や精神療法が主ですが、難治の患者さんや重度の患者さんには、修正型電気けいれん療法(m-ECT)も治療法の選択肢の一つです。
電気けいれん療法(ECT)は、1938年にイタリアで始まった治療法です。患者さんの頭部に電流を流し、人為的にてんかん発作のようなけいれんを引き起こすことで、統合失調症を治療します。1938年当時は、「てんかん患者さんは統合失調症を合併しない」と信じられていたため、統合失調症の治療に電気けいれん療法が行われました。
日本では、1939年に最初の電気けいれん療法が行われ、昏迷状態の統合失調症の患者さんや自殺念慮が強いうつ病の患者さんには劇的な効果があると期待されていました。
戦後、日本各地に精神科病院が設立されましたが、有効な治療薬がないことから、100ボルトの電流を数秒間流して、人為的にてんかん発作を起こす治療が行われていました。それ以前から、薬によってけいれんを起こしたり、インシュリンの投与によって低血糖状態にしてけいれんを起こす、薬であえて高熱を出してけいれんを起こすといった治療法も行われていたことも知られています。
また、病院内で暴れたり、指示に従わない患者さんに対して、懲罰として電流を流すという行為も行われていました。治療としてけいれんを起こす場合には、患者さんの目の前で大発作が起こることから、患者さんは大きな恐怖感を感じていたと考えられるでしょう。
以上のような背景から、電気けいれん療法は、精神科治療において、「非人道的な治療」というイメージを持たれてきました。
その後、様々な向精神薬が開発され、人権への配慮が高まるにつれ、電気けいれん療法は衰退していきました。現在では、薬物療法が精神医療の治療の中心になっており、電気けいれん療法を見たことがない若い精神科の医師も増えてきています。しかし、電気けいれん療法はいまも、難治性うつ病の治療を中心に利用されています。