喘息の症状がない時でも炎症をコントロールして悪化させないようにしましょう。

気管支喘息とは「気道の炎症と種々の程度の気流制限により特徴づけられ、発作性の咳、喘鳴(ぜんめい)および呼吸困難を示す病気」と定義されています(成人の場合)。難しい医学用語で何を言っているのか判りづらいですね。平たく言えば、「空気の通り道が塞がれる結果、ゼーゼーして息が苦しくなる病気」といえます。
ただ、似たような症状を示す病気は多々あり気管支喘息の診断は単純ではありません。典型的な発作は呼吸のたびにゼーゼー、ヒューヒューというような音を伴う呼吸困難がおこり、それには気管支拡張剤の薬がよく効く、時には自然に軽快する、といった特徴があります。発作の程度や持続時間などは様々ですが、酷くなると息苦しくて動けない、横にもなれない、ハカハカして会話もできないような重症発作に至ることもあります。
気管支喘息の症状
気管支喘息の方は、発作がない時には症状は特にありません。感染や気候・気圧の変化、煙やアレルゲンの吸入などをきっかけとして発作がおきます。発作が起こると咳き込んだり呼吸が苦しくなったりして、「ゼーゼー」ヒューヒュー」といった笛を吹いているような音がするようになります。ひどい発作の場合には、苦しくて仰向けに寝られなくなったり会話もできなくなったりすることもあります。
気管支喘息の原因
気管支喘息の原因は現在のところ完全に解明されてはいませんが、気管支喘息の多くにアレルギーが関わっていると考えられています。

人は生きているうちに様々なたんぱく質をはじめとした有機物を吸い込んだり食べたりして体内に入れています。通常は人体に悪さをしないタンパクには反応しないはずですが、時に有害物質と勘違いしてしまい、白血球が集まったり色々な刺激物質を作り出したりといった過剰な反応をすることがあります。過剰な反応がおきてしまうと、気管支の壁が縮んで空気の通り道を狭めたり、粘っこい痰をいっぱい出して通路を塞いだりしてしまい、喘息発作が起こります。いったん有害物質と認識されてしまうと、次に同じ物質が体内に入ってきた時すぐに反応できるよう準備を整えるようになり(この状態を感作といいます)、何度も繰り返すことになります。
アレルゲン(アレルギーを引き起こす原因物質=有害物質と勘違いされた有機物)となり得る物質は無数にありますが、代表的なのものにはダニの死骸やフン、ホコリ、カビ、猫やネズミなどの動物のフケ等があります。
気管支喘息発作の増悪因子
アレルゲン | ホコリ、ダニ、牛乳、卵、大豆、小麦、そば、動物の毛などに反応することがあります。 |
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風邪や感染症 | 体力が弱ったときに炎症がひどくなり症状が悪化することがあります。 |
気候の変化 | 気温、気圧、湿度などが変わりやすい季節の変わり目に影響を受けるとこがあります。 |
喫煙・受動喫煙 | タバコの煙や線香の煙などが発作の引き金になることがあります。 |
薬 | 解熱剤、鎮痛剤、風邪薬、痛み止めのシップ、塗り薬など非ステロイド性消炎鎮痛薬を含む薬が原因の場合があります。 |
運動 | 運動で呼吸が多くなり空気をたくさん吸い込み、気道が冷やされて乾燥することによって起こることがあります。 |
過労・ストレス | 疲れて抵抗力がなくなったり、自律神経が乱れたことがきっかけになることがあります。 |
気管支喘息の診断と治療
気管支喘息の診断は、発作の頻度や程度、時間帯や起き方など詳細な問診と診察、肺機能検査等を踏まえて総合的に行います。治療薬には吸入薬、内服薬、貼付剤などがありますが、治療の基本は吸入ステロイド療法が中心になります。ステロイド剤は炎症を抑えるホルモンですが、極微量を吸入して直接気道に投与することにより全身性の副作用は殆んど見られずに済むようになっています。
発作の頻度や重症度に応じて、気管支拡張剤や抗炎症剤、抗アレルギー剤等を追加したり減量したりしながら発作をコントロールしていきます。中には普段定期的な薬は使わずにいる方もいますが、気管支喘息の病態は慢性的な炎症であると考えられていて、喘息の人の気道は常に刺激が加わった状態ですので、放置したまま長年経過すると気管支の壁が厚く変形した状態に固定してしまう可能性があります。気管支喘息と診断されたら症状がないときでも炎症のコントロールに努めていく必要があります。